Inoue Methods@facebookより

査読プロセスについて、Inoue Methodsグループで有益な議論がありました。

質問(A先生より)

論文の査読、まだ途中かもしれませんが、拝読させていただきました。いつもどうもありがとうございます。
・論文のOriginalityがあるか(特に原著) 
・十分に練られて投稿されているか 
・著者らは正しく知見を語っているか
など、論文の本体に関わることを最初にチェックするのですね。
1つ質問があります。私は日本の学会の論文しか査読したことはありませんが、日本語論文とImpact Factorのある英語論文では、査読の厳しさが異なると感じています。論文のレベル?による査読の違いがありましたら、教えていただけると嬉しいです。ご検討よろしくお願い申し上げます。

Inoue Methods作成者

先生の経験に基づいた的確な質問だと思います。まず査読者の態度ですが、これはどの雑誌でも基本的に同じでいいと思います。さきほどあげた重要なポイントについて、査読者として率直な意見を出す。

>論文のレベル?

これは多分、論文というより投稿する医学雑誌のレベルというか人気度によるでしょう。和文雑誌はどうしても投稿者が少なくなります。一方IFの付く英文雑誌はみなが投稿しますから。少ない椅子の取り合いですから、相対的に厳しくなるのも仕方ない面があります。ですがそれはあくまで雑誌(編集委員会)の決定するところであって、査読者が気にすることではありません。それに、後者の雑誌では投稿して査読に回らない論文も多いのです。査読に回ってきた段階では、「私たちの雑誌に掲載するにふさわしいかどうか見てください」ということですので、少なくとも掲載の可能性が(少しでも)あると考えているわけですから。

ではこういうメジャーな雑誌にだけ投稿すべきでしょうか。投稿者の立場で言うと、そうではないと思います。査読のきちんとした雑誌であれば、原著はりっぱな論文です。マイナーな雑誌であっても、そういう雑誌に投稿したら「教育的査読」を受けられる可能性もあります。その場合、著者は成長するチャンスを得ます。

付け加えると、査読者も何度も査読していればその雑誌の判断基準がわかってきます。それが査読に反映する面はあるかもしれません。ですがこれを過度に意識する必要はないでしょう。

ちょっと話が広がりましたが、このように思います。

A先生

(参加者コメントに)どうもありがとうございます。確かに私はImpact Factorのつくような雑誌には、切り捨てられた経験しかありません(苦笑)。
国内のローカル雑誌は査読時に「建設的なコメントを」と依頼されることがありますので、確かに「教育的査読」という印象があります。それでもリジェクトで提出することもありますが…。

井上先生、貴重なコメントを早々にどうもありがとうございます。確かに査読に回らないでリジェクトされた経験もあります(苦笑)。人気度によるというのは納得です。
重要なポイントをきちんと押さえて査読して、あとは雑誌(編集委員会)にまかせればよいのですね。とても参考になりました。
あとは査読の重要なポイントをおさえた論文をきちんと作成して投稿することですね。

B先生

なるほど。ばさばさ切るのは査読者ではなくて編集者なんですね。違いがよくわかりました。引用文献が一つもない単純集計の論文(もはや論文とよべるか)に対し、「このデータだったら、こういうことがResearch Questionになりそうなので、こういう流れで論じたらどうか」という教育的査読(もはや査読とよべるか)を返したことがあります。その後、著者が非常に努力されて、再投稿はなかなか立派になっていましたが、結論は「今回はReject次回再投稿期待」にしました。論文としての最低ライン、日本語の表記法や文法含めて、こればかりは仕方ないですね。
後日談ですが、その査読を見た編集の方から、ある団体での「論文の書きかた講演会」の依頼をされました。思わぬ副次効果というか、なんというか。。。(笑)もちろんお受けしましたが、Inue Methodsはそういうところにも応用可能ということですね。

Inoue Methods作成者

それから、私はいくつもの雑誌で査読していますが、それらの雑誌でいちいち意識的に基準を変えたことはありません。ポイントをまず見る、その視点を変えないことが大事でかつ実際的でもあります。

A先生

井上先生、どうもありがとうございます。編集委員の経験はありませんので、そのような裏方仕事?の苦労は想像はできますが、実感したことがないので、とても参考になります。「ポイントをまず見る、その視点を変えないこと」ですね。今後の査読に活用させていただきます。