IM MentorへのMail

ここは、直接メールのやり取りの中から、有用と思われるものを掲載しています。無論、相手の方の承諾は得ています。

今まで見知った「最低の」大学院講義

ある大学院で学ぶ人から

Dさん「研究会で先生のお話を伺った者で診療所勤務しています。臨床研究の方法を勉強したいと思い、大学院に入りましたが、進歩のない毎日でした。先生のお話を伺い、光が差した気がします。現場からの臨床研究ができるよう精進したいと思いました」

 

IM「参加いただき、ありがとうございました。ぜひchiikiiryo.jpを訪れください。また、その感想などいただければ幸いです。結構はっきり書いているでしょう^^」

 

Dさん「直球勝負、という感じがして素晴らしいです。なるほどと納得させられる事ばかりです。ここで勉強させていただきたいと思います。臨床研究のいくつかのヒントもいただきました。JIMの連載も楽しみにしております」

 

IM「僕はほんとのことしか書きませので。大学院の学び、というところもぜひ読んでください。教授だから必ず良い研究指導ができるというわけでもないのです。それから、メンターの存在はとても重要です」

学習者からのFeedback & Response

ある学習者からのフィードバックに対して、以下のようなレスポンスをしました。

 

・講義へのFeedback(意見・感想など) 
 今回の講義を聴き、大学での教育はとても大事なことだと改めて感じました。同じ学科を出たとしても、大学の教育方針や教授などにより、教育は狭まったり、広がったりすると思います(Res 1)。
 自発性等も大事だと思いますが、もし、私が逆の立場だったら、いろいろなことを挑戦してもらいたいと思いました。また、私は頭が固く、難しく考えてしまいます。井上先生は、昔からこのようなものの考え方だったのでしょうか(Res 2)。
 頭を柔らかく、シンプルに、すっきり整理できるようになることが、私の今後の目標かと思います。この地域医療学では、地域医療のことだけではなく、研究についてだけではなく、物の考え方など、今後の生活にも活かせる知識を学べる講義だと思います。ありがとうございます(Res 3)。
Res 1:その通りです。ただ大学の教育方針(カリキュラムポリシー)が個々の教育の場に、あるいは個々の教員に反映されるとは限りません。例えば帝京大学のそのキーワードは「実学」、「自分流」です。ですがその実践は、それはあなたが学んでいる場と、そしてそのとおり教える側によって左右されるものなのです。実学であるならば教授陣は豊富な実践経験があるのは当たり前です、例えば研究を指導するなら研究の、です。そして教授陣とて無論成長途上であって、自分をありのままに見せるべきです。ここでも、Disclosure is Panacea.です。
Res 2:自発性は無論必須です。ですが大学院に関して言うなら、それは一通り学部教育と社会経験を持つ成人高等教育の場です。ですから講師陣はメンターという名の触媒となって、自発性を備えた学習者がさらに前に進む手助けをするべきと思います。何もしないメンターでは、たとえ自発性を持っていても前に進める強さやスピードはおのずから違ってくるでしょう。なお、生まれつきというか、僕は昔からたぶんこういう考えをしていたのだろうと思います、もちろん昔はもっと練れていませんでしたが(笑) Natureからのものなので、これまで僕に接した若手たちはこういう僕の考えに染まっていきました。彼らは僕を師(メンター)と呼び、僕は弟子と呼んだりします。
Res 3:どちらかというととくに日本においては、「学び」はそれまで理解できなかった難解なものを理解できる過程、またそれに伴う求道者のような心構えだとされてきました。そして辛さや困難を打ち超えて初めて学びがあると。それは成人高等教育においては適切ではありません(それがまた、我が国において大学院教育が向上していかない理由でもあります、多くの教員がこのことを理解していません)。すでに蓄積のある学習者においては、これまでの上にさらに学びによって知識を「結晶化された智慧として習得するべきなのです。機会があれば成人(社会人)の学びについてもみなさんにお話ししたいと思います。
 なお、これは別の話ですが、僕は公衆衛生研究科の専任教授ではありません。僕の本務は医学部(ちば総合医療センター)で、公衆衛生研究科は兼担しています。ですが一期一会、公衆衛生研究科で出会った皆さんにもこの場を通じて、僕の歩んできた道や考え方を教えたいものだ、そういう気持ちであの地域医療学の講義をしています。
*********************後日この学習者から来た返事です。
 私事ですが、私は大学卒業後に学ぶ事が楽しく、進学したいと思っておりましたが、その時は社会に出るべきだと思い就職致しました。しかし、病院に勤め、人や疾病について栄養を考える前に、公衆衛生についての知識が乏しいと感じ、公衆衛生学に興味を持ちました。
 私は病院を2年弱、その後企業の栄養指導を行い、関東に来る事となり、現在に至っております。社会経験も乏しく、「これをしたい!」と思える研究を持つ事もなく、ただ漠然と気合いで来てしまい、今になり、悩む事も多いです。恵まれた悩みなのだと思い、もっと社会経験を積み明確な目的を持って進学するべきだったのではと思う事もあります。しかし、現在進学し、いずれは教育の大切さを伝えられるようになりたいと感じております。
 井上先生は、実践から教育に携わられる様になられた方だと思い、教育の現場でめられている先生だと私は感じました。井上先生の講義を受ける中で、自分ができる範囲で始める、等等、一生懸命私たちに経験を伝えて下さる気持ちを感じております。研究も続けられ、兼任での公衆衛生研究科の担当も教育にも重きを置き指導して下さる教授だと感じております。
 私も密かな思いですが、英語を勉強し、海外で学びたいとも考えております。語学力も乏しく、今からスタートを切りますが、実現出来るように、日々努力したいと思います。大変な事を乗り越えて得られるものがある。自分の未熟さに勝てるよう、これからの2年間弱も頑張りたいと思っております。

 私事を長々と書いてしまいましたが、この様な返事を頂けると思わず、有り難く感じております。Disclosure is Panacea.大切だと感じながらも、私の苦手な所でもあり、少しずつ、大切にしていきたい言葉だと感じます。ありがとうございます。
「良い教育は学習者と教育者の、生き生きとした交互作用から生まれる」IM Mentor

投稿時の査読者の推薦(&非推薦)

若手研究者のNさんから、このテーマで質問がありました。たしかに、経験がなければどうしたものかと首を捻る項目ではあります。

 

Nさんの質問

 ジャーナルに投稿するプロセスで、査読者として

・推薦したい:2−5

・推薦したくない;13名

の入力が必要となります。

参考;Submission checklist

http://www.dmsjournal.com/manuscript 

・・・・

We welcome suggestions of potential peer reviewers who are qualified

to review your manuscript. Please do not suggest recent collaborators

or colleagues who work in the same institution as yourselves.

Intentionally falsifying information, for example, suggesting

reviewers with a false name or email address, will result in the

manuscript being rejected. You need to provide the names, e-mail

addresses, and affiliations of at least two potential referees for

your article. Please include at least one potential reviewer who is

outside your own country. Suggestions from a number of different

countries would be appreciated.

・・・・

こちらが提起する査読者は、あくまで参考にする程度という理解でよさそうでしょうか。また推薦したくない査読者は、研究内容がかぶっていなければよい、という認識でいいのでしょうか。どういう人を推薦して、推薦しない方がいいのか…なにかアドバイスなどいただけないでしょうか」

IM Mentorの回答

まず、この項目は多分ですが自由記載のはずです*。ですが、記入したら雑誌側は手間が省けて助かります。雑誌側は当初すぐにレジェクト(門前払い)でなく査読開始の場合は、当たり前ですがこのトピックに詳しい査読者を探さないといけないので。ですので推薦のほうは積極的にすると喜ばれます。

 

推薦の基準は、

・仲間内でない知り合いで(ですから査読を受けてくれそうで)、投稿論文の分野に詳しい人。

・先行研究で引用している論文のCorresponding Author

 前者のほうはそうはいっても、なかなかかいないでしょう。なので後者が主になると思います。特に、その先行研究の方向性の延長上に、今回投稿する論文がある場合が好ましいです。具体的には、IntroductionDiscussionで引用している論文がそれにあたると思います。さらに具体的に言うと、Introductionの最後の段落、つまりThis study examined.......というようになっているはずですが、その前の段落にあることが多いですね。

 この雑誌では公平性を保つ意味合いだと思いますが、仲間内は除外すること、そして日本以外の査読者を推奨と明記していますね。

 

非推薦(正確には査読してほしくない)の基準は、

・あきらかに競合しているグループのメンバー

・論文の立脚点をあきらかに否定しそうな研究者

などが当てはまると思います。こちらのほうは、思い当たる人がいなければさして列挙する必要はありません」

 

*この雑誌ではどうやら査読者の推薦が条件のようでした。