優れた論文とは:芸術との対比から

Keyword 寓意(hidden meaning, Hidden message), Disclosure is 'Panecea.'

 

良き絵画:作成者が寓意を込めた絵に、鑑賞者が己が自身の感性で、絵に触発されたQuestionやImaginationを持つ→鑑賞者の数だけある

 

良き論文:作成者(著者)のQuestionが読者に伝えられ、全ての読者はその著者によるSolutionへと作成者に案内される(迷わない)→Message(伝えたいこと)は同じものが全員に伝わる、だが、それをどう評価するかは読者に任される

 

したがって論文では、

・著者のResearch question

・上を受けてMessage生成にいたる筋道

・Messageを内包するResults

・Resultsから得られるMessage提示(評価・検討を伴う)

 

その全てが明確で、誰が読んでも同じ情報が提示される必要がある。上の各々が、本文のIntroduction, Methods, Results, Discussionに相当するのは言うまでもない。

 

絵画などの芸術作品では、鑑賞者は自分の感性で作品に接する。したがって、鑑賞者の数だけストーリーがある。作者は作品に、明確な意図に加えて、隠れた意図も内包させる。それを読み解くことも、また鑑賞者の数だけバリエーションがある。

 

したがって、極めて対照的なこの事柄に焦点をあてて、ある意味では対極にある芸術作品から「良き論文」を考えてみた。

Jan Vermeerの絵から(ページ移動予定)

The girl with a wineglass.(Jan Vermeer) 出典 Wikipedia commons クリック拡大してお楽しみください
The girl with a wineglass.(Jan Vermeer) 出典 Wikipedia commons クリック拡大してお楽しみください

*書いていたらかなりInoue Methodss作成者の趣味的部分が出ているので、移動予定です(まあ読んでください)。

 

この絵はかなり以前に、初めて見たときから目に焼き付いた作品である。どちらかというと(隠れたメッセージは別にして)穏やかな雰囲気の絵が多いフェルメールだが、この絵は違っている。

・こちらを見ている若い女性の、明らかにワインを勧められて当惑した表情

・一人はワインを女性に勧め、一人は奥で所在無げにしているもう一人と良く似た男性

 

この絵にも、多くの寓意が隠されている。それは、作者の感性によって作り出された、鑑賞者の感性を刺激するスパイスのようなものだ。したがって、多くの解釈がある(一度クリックして拡大してから読んでください)。

 

男性2人の関係はあいまいで、女性に飲酒を勧めている男性は、後方に腰掛ける男性と女性との間を取り持っているとも見られている(作品集1より)

・後ろの方で座って肘をつき面白くなさそうな男性。酔っ払ってしまったのか、この女性をめぐる駆け引きに敗れてふてくされているのか(後者かな~)それとは対照的に中心の男性はもうイケイケです。手まで添えてしまって。出展

 

この絵も多くの寓意がある。

・窓の色ガラスには片手に直角定規、片手に馬の手綱とくつわ(欲望の統制を寓意する)を持つ「節制」の寓意像(出展、なお出展にはないが直角定規は理性の象徴ではなかったかと思う)

・その寓意像が、この光景を見ている

以下は(他にも似たような意見は多々あろうが)Inoue Methods作成者の感じたことである。

・壁画はこの家の昔の当主であろうか、威厳や伝統的な価値観を暗示させる。日本の諺でいえば、「親の戒めは後になって効く」というところか。

・テーブルの上の果物(りんご?)は2個あって、一つは手つかず、もう一つは切られて幾片かは食べられている。アダムとイブ、男女の仲における二つの結末を暗示している。そしてこのりんごの各々は、二人の男に対応しているのかもしれない。ちなみに、果物は黄色である。この色の持つキーワードは、陽気という面と、軽率という両面がある。

・若い女性の表情は当惑とやや困惑からくる笑みに感じる。

 

フェルメールの絵画を楽しみたい人へ:作品集1作品集2