自分の研究を開始する前に

周囲で研究をしている人がいたら、積極的に手をあげて参加する。

なにごとも、「経験が生きる」です。

 

*Inoue Methods作成者の場合

基本的に参加したい人は、(所属に関わらず)歓迎

まず、基本構想の段階から入ってもらう

適切な構想中や作成中の論文を選んでCorresponding author(後述)として貢献してもらう

このやり方で成長してくれた研究者の例(松本正俊先生)

 

質問

「自分のやりたいことと関連する研究をしている人がいません」

回答

「少なくとも興味のもてそうな研究と思ったら、積極的に参加しましょう。分野は関係ありません。研究の発案から論文掲載にいたるまで、研究者にはやらなければいけないことが沢山あります。大変そうに見えますが、それらは積み重ねていくとルーティン化しますので意識しなくてもできるようになります。他の人の、できれば熟練者の研究を手伝うことで見えてくるものが沢山あります」

適切な指導者を持つ

指導者の資質を参照ください。

 

以下は、若手研究者を育てることに関してエッセイを掲載した抜粋です。

 

..論文の全体像は私が指導したのですが、論文を実際に形にしたのはその彼です。彼は「これだけいろいろな作業があるのだったら、研究をしたことがない人が最初から研究の主体者になることは困難です。今回先生の論文を手伝うことにより、自分自身で研究を遂行するための経験が積めました。」と言いました。実際彼はこの論文を通じて、その関連分野の知識、統計解析、Internet経由の論文検索、検索結果からの文献データベース作成、英文校正、図表の作成、カバーレター作成、投稿、Editorとのやりとりと経験を積んだわけです。そして現在その関連分野でFirst Authorとして自分で論文を書き始めました。 ..(月刊地域医学より)

 

Research preparation wheel

研究は当たり前ですが、事前準備が大切です。「研究デザイン/プロトコルは重要か」で書いたDesign arrestにならないように、現場の状況に研究をすり合わせ、あるいは実行可能なように落とし込んでいかないといけません。Research preparation wheelはそのためのものです。

研究は事前準備が大切である クリックで拡大
研究は事前準備が大切である クリックで拡大

重要!
まず、自分の研究疑問・仮説について考えます(5 spoked wheel )。

 

*縦断的研究論文からの例示を付記しています。他の研究デザイン、あるいは分析データの作成が研究開始後の場合であっても基本的には同じと思います。

*Research preparation wheelはクリックで拡大します。

 

1. What will my study be able to add something new among the yet unknown?

  わかってないものの中で、自分の研究が新しい知見として加えられそうなものは何か?

  例)心胸郭比の加齢変化は男性では調べられているが女性ではない。

2. What is the reserch question to indicate this new finding?

  その新知見を提示できる(調べるべき価値のある)研究疑問は何か?

  例)高齢女性では、加齢変化により心拡大とされる50%以上になることがある。

3. Do my research field and materials have a possiblity  to answer it?

  自分のフィールドと資料・材料ではその研究疑問に答えられる可能性があるか?

  例)診療所に10年以上前からの胸部X線写真が保管されている。

4. How can I retrieve the materials for this study?

     どうやってこの研究でのための資料を取得するか。

  例)過去のある時点と最近の時点の両方で胸部X線検査を受けた人を記録から拾い出す。

5. How can I make the feasible data to match the analysis of this study?

  どうやって「この研究での分析に適した」データを作成するか。

  例)診療所スタッフに計測方法を教え、空き時間に心胸郭比を計測してもらう。

6. この時点で元に戻り、再度1を確認する。

 

Note:

1. StepではなくやはりWheel(車輪)としたのは理由があります。Stepとすると、あるところで躓いたらそれから先には進みません。Wheelでは、どこまで戻ってもいいです。現場で実際に実行可能なように、車輪の各スポークを検討しましょう。

2. 準備の段階ですので、中心にこれまでわかっていることの上にある「いまだわかってないこと(What is yet unknown.)があります。それを明らかにしていく、Wheelです。

3. 一巡したら、全体を見直し、新規性と独創性を再確認しましょう。もし問題があったら、再度Wheelを回しましょう。さあ、ここからスタートです。

 

Design arrest*を防ぐために、現場の状況とすり合わす、それがPBR!」


*研究デザインやプロトコルをしっかり考えたのに、一向に研究が進まない状態→「研究デザイン/プロトコルは重要か」参照、いえ無論そうなんですが....

 

Research praparation wheel: merit(長所)

Research praparation wheelをきちんと書くと、いいことがあります。

 

「Research praparation wheelはIntroductionとMethodsの下書きになる」

 

無論、AbstractのBackgroundとMethodsもです。

Methods(クリックで拡大)
Methods(クリックで拡大)

これは例示した論文のMethods部分です。Research preparation wheelを回すことで、Methodsの土台がほとんど出来上がるのがわかると思います。