論文としてのCase report(症例報告)
症例報告もまた、立派な論文になりえます。しかし残念ながら、多くの学会などで見かける症例報告はその域に達していません。「論文として」の症例報告を、実例をあげて提示します。
To be constructed.
Case reportと言えど、Originality boxの本質は変わりません。
・その疾患についてわかっていることは何か
・この症例報告で、読者は新しく何がわかるか
この要素がやはり、症例報告にも必要です。言い換えると、「その」症例を報告することで、たとえ元の病気が既知だったとしてもその上に新しい知識が付加されることです。それはおそらく無数にあると思いますが、例えば、
・ある状態がプラスされると、疾患の様相(症状や予後など)が変化する
例:妊婦にりんご病が発生すると、胎児水腫(重症貧血)になることがある
・いまだ議論がある検査結果の解釈について、意見を提示する
今回の提示例(以下に記載)
Macro creatine kinase type 1の臨床的意義について
Inoue K. Macro creatine kinase type 1: a clinically significant marker? Clinical Chemistry and Laboratory Medicine 2000;38:379.
バックグラウンドストーリー
高齢者の男性が、四肢痛を主訴として訪れました。血液検査(電気泳動)に、異常なパターンがあり、マクロクレアチニンキナーゼのバンドだが、「臨床的意義に乏しい」と検査結果用紙に記載していました。この男性の痛みの原因が不明なのでいろいろ調べたところ、逆に「悪性腫瘍や膠原病などで出現する」とも書かれていました。
その後もいろいろ検索したところ、臨床的意義が少ないという記述も、いやあるという記述もやはりあり、臨床家としてはどう考えたらいいのか迷いました。それで、議論を提起する意味でこの小論文(Letter to the editor、短くはLetter)を投稿しました。
Note
1.このトピックについてのWeb資料です。この論文は2000年のものですが、どうやら現時点でも全く臨床的意義がないというわけではなさそうですね。
2.これはLetterですが、雑誌によっては掲載論文へのResponseだけでなく、このようにSmall pieceの論文を掲載するところもあります。