第78回公衆衛生学会総会

自治体規模および自治体僻遠性を加味した薬剤師地域分布の動向調査(1996~2016年)

演題名:

自治体規模および自治体僻遠性を加味した薬剤師地域分布の動向調査(19962016年)

 

安藤崇仁1、井上和男2

1:帝京大学 薬学部

2:帝京大学 ちば総合医療センター

 

【目的】

地域包括ケアシステムの中で、薬局には住民が気軽に相談できるファーストアクセス機能が期待されている。そのため、薬剤師の地域分布動向を把握することは重要である。今回我々は薬剤師分布について、新しく各市町村人口の実数値および高齢者数による分析を行った。1996年から2016年の20年間における薬剤師の分布動向を、人口的および地理的に分析したので報告する。

 

【方法】

厚生労働省のデータベース、e-Statにて公開されているデータを用い、1996年、2006年、2016年の3時点における薬剤師の市町村分布について評価を行った。

各市町村の薬剤師数は2年毎の薬剤師調査データを用い、薬剤師全体および勤務施設毎に抽出した。人口データは、調査時点にもっとも近い国勢調査のデータを用い、人口および年齢分布を抽出した。また、各市町村の役所所在地から自治体が所属する都道府県庁所在地までの交通距離を市町村の僻遠性を示す地理的指標とした。市町村合併については、合併後である2016年時点の市町村となるように補正を行った。

薬剤師分布の指標として薬剤師数対人口比を算出し、偏在の様相はLorenz曲線およびGini係数により評価した。Lorenz曲線は、横軸を相対累積人口、縦軸を相対累積薬剤師数として描画し、市町村規模、高齢者数および地理的指標により市町村をソートして分析を行った。

 

【結果】

市町村規模別の薬剤師数対人口比は、大規模市町村ほど大きかった。薬剤師数対人口比の増加率は小規模市町村ほど大きかったが、人口10万人あたりの薬剤師数の増加量は大規模市町村ほど大きかった。一方、交通距離別の薬剤師数対人口比は、交通距離が短いほど大きかった。市町村規模順のGini係数は、薬剤師全体および薬局では持続的に減少していたが、病院では1996年から2006年にかけて減少したものの2016年にかけて増加していた。交通距離順のGini係数は、1996年から2006年にかけて減少したものの2016年にかけて増加していた。高齢者率順のGini係数は、勤務施設に関わらずいずれの場合も増加していた。

 

【結論】

 

20年間の3時点分析において、薬剤師が不足した地域への薬剤師分布が改善したが、その改善の程度は後半には低下した。また実数において薬剤師全体では大都市部へ集中する傾向にあることが明らかとなった。